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2016年12月

2016年12月24日 (土)

今年のおすすめの本

Library今年も残りわずかとなりました。
中央図書館からお借りした本から7冊をご紹介します。
1.「モモ」ミヒャエル・エンデ著 岩波文庫他
映画「ネバーエンディングストーリー」の原作者であるエンデが書いた童話です。「時間貯蓄銀行」の謎の行員の巧みな話術に騙され、余計な時間を失い忙しく働く人たち。遊び相手を失った孤児の女の子モモだけが異変に気付き、失われた時間を取り戻す物語です。1970年代に書かれた本ですが、時間に追われ生活する現代人のライフスタイルに一石を投じます。

2.「狼の群れと暮らした男」ショーンエリス、ペニージューノ共著小牟田康彦訳 築地書館2012年9月初版
イギリス生まれのショーンさんは、狼の魅力に取りつかれ、渡米。野性狼の住むロッキー山脈を1人で探検。飢え、狼と接触する中でできる傷、マイナス20度にもなる真冬に2年間耐えつつ、ついに狼の信頼を勝ち得て仲間として受け入れられる。狼の差し出す生肉を食べ、可能な限り一緒に行動し、野性狼の生態を身をもって会得する。イギリスにもどり自然動物園で働きつつ、農作物を荒らす狼と人間との共存について世界中に説いて回る。狼の吠え方の違いとその意味、群れの序列と役割、子育て、序列ごとの獲物を食べる部位の違いなど、野性狼の群れの中に居ないと発見できない生態に興味をそそられます。又、犬と狼は0.2%しか遺伝子の違いがないそうで、犬を飼う人にとっても犬の本能を知るうえで有益な本です。

3.「南木曽の木地屋の物語」松本直子著 未来社 2011年4月初版
木のお皿、椀、お盆などは、陶磁器やプラスチック製品に押され、最近はあまり見かけません。本書は、木地屋の伝統を受け継ぐ岐阜県南部の小椋榮一さん一家のお話です。平安時代からの職業の木地屋。日本各地の山を大きな木を求めて移動し、轆轤(ろくろ)で木工製品を作ります。一般的には、作品が世に出るには漆を塗る作業が必要で、木地屋はどちらかと言えば控えめな存在です。榮一さんの息子・正幸さんは、塗りの作業も学び、最終的な商品として仕上げ、お店で一般消費者向けに直販されています。あまり知られていない木地屋の1200年の漂泊の歴史、明治以降の定住と地元住民との交流、展示会への出品など現在の積極的な活動の数々、読んでいて興味が尽きません。
小椋さんのお店「ヤマト小椋商店」は、有名観光地・妻籠宿の近くにあります。(国道19号沿線は、名古屋在住時によく通っていましたので、個人的には親しみのある土地柄です。)
http://yama.to/profile.html

4.「むだ死にしない技術」堀江貴文著 マガジンハウス 2016年9月初版
本年3月に著者の堀江氏は、「予防医療普及協会」を立ち上げました。日本では、がん検診検診率が低く、国民全体に予防医療の認識が低い。予防可能な時期を過ぎて発症後、慌てて病院に駆け込み、高額な医療費を払った挙句、既に手遅れになるパターンが非常に多い・・と、著者。本書はとても読みやすく、がん検診や歯の定期健診を実施している私からすると、内容に共感する部分が多いです。ですが、本当に読んでほしい人は、その他大勢の「サザエさん」的な(とても日本的な)のほほーんと暮らしている、検診を受けない人達なのです。堀江氏は、「最終目標は、3大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)の撲滅である。」と訴えます。

5.「雪は天からの手紙・中谷宇吉郎エッセイ集」池内了編 2009年第7版 岩波少年文庫555
雪の結晶の研究で有名な中谷氏が書いたエッセイを、池内了氏が中学生向けに再編。これから理数系に進む学生さんらに、科学の楽しさを伝える一冊です。昭和10年から戦後にかけて北大に研修室を構えた中谷氏は、顕微鏡や写真機、それに一冬分の食料を馬橇に積み込み、十勝岳山頂付近の山荘で越冬。マイナス10度の気温の中で、雪の結晶の研究にいそしみます。今のようなコンパクトな機材や暖房器具がない時代での研究は、さぞご苦労があったことでしょう。エッセイの中には、雪の結晶の研究のお話や恩師の寺田寅彦氏、ノーベル賞受賞者の湯川秀樹氏のお話、若い読者に向けてのメッセージなどが二十数編収まっています。「平凡な日常の中には不思議な事がたくさんあって、それを不思議だなぁと感じる心が大切です」と中谷氏。同感です。本書のほか、著書、写真集など多数あります。

6.「マラムレシュ」みやこうせい著 未知谷発行 2000年1月初版
ルーマニアの北部、ウクライナと隣接する村「マラムレシュ」の魅力に取りつかれた著者が、人々の暮らし、風俗、風習について語ります。あまり日本ではニュースに取り上げられないルーマニアの、首都ブカレストから更に650キロ離れた辺境の地マラムレシュ。殆どの村民が羊を飼い農地を持ち半牧半農。衣食住のほぼすべてを自活し、ヨーロッパ最後の桃源郷と言われています。著者の取材は25年間にわたり、村民の心のありかを250ページにわたりレポートしています。所属する国もめまぐるしく変わり、戦後の社会主義政権も崩壊し、自由経済の波が押し寄せる中、決して裕福な生活ではありませんが、プラムで作るお酒「ツイカ」と踊りをこよなく愛し、大自然とともにに生きる村人達の様子が豊富な写真付きで紹介されていて、一度訪れてみたい衝動にかられます。終わりの章には、第二次世界大戦中のユダヤ迫害、チャウセスク政権の実態などについても書かれています。

7.「親子で学んだウィーン・シュタイナー学校」広瀬牧子著 ミネルヴァ書房 1993年12月初版
1990年に1年間、オーストリアのウィーンにあるシュタイナー学校に留学した子供二人と、その母親である著者の体験記です。テストも教科書もなく、情操教育を主に実施する学校として何度か耳にしたことのあるシュタイナー学校。今の日本から見れば夢のような学校ですが、その実際のカリキュラムと先生の教え方、保護者のサポート活動などが、母親の目を通したわかりやすく書かれています。広瀬夫妻は現在、東広島で保育園を開園され、シュタイナー教育を実践されています。日本には、相模原市に初等部から高等部までの学校法人シュタイナー学園、横浜に中小一貫校のNPO法人横浜シュタイナー学校など、全国で7校あるようです。著者の夫は、当時、広島大学の教授でシュタイナー教育の実際を学ぶために1年間渡欧し、それに家族が同伴した形で1年間だけという短期留学が認められたそうで、極めて特例だそうです。
生徒さんの立場から見た本には「私のミュンヘン日記」(子安文著 中公新書797)があります。十年生(15から16才)での羊毛の糸を紡ぐ授業(第7章)など、各年齢に応じた具体的な実習内容が詳しく書かれています。そのほか、お母さんの子安美知子さんの「ミュンヘンの小学生」ほか、関連図書多数。

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