甲野善紀氏のお話から「帆掛け舟とヨットの違い」
昨日とおとといのラジオ深夜便の朝4時からのインタビューは古武術研究で知られる甲野善紀氏のお話でした。とっても面白かったので少しご紹介します。
1.帆掛け舟とヨットの違い
風が頼りの両者ですが、帆掛け舟は風下の方向にしか進まないのに対し、ヨットはジグザグで風上にも進むことができます。帆掛け舟しか知らない人は、ヨットを見ると魔法のごとく目に映りますが、ヨットを勉強して原理を知れば、これまでの帆掛け舟の常識は過去のものとなるわけです。これまでの練習の繰り返しをいくらがんばっても、新境地に至ることは難しい。私個人的には、過去に木曽川でウインドサーフィンの経験があるので、ヨットの原理も実体験としてわかります。ある業種で難題である事柄が、違う業種では既に解決済みなんてことはたくさんあります。異業種交流で新しい製品ができるのもその1つ。昨年の冬季競技ボブスレーのソリもその1例です。
2.柔道と柔術、武道と武術の違い
○○道と名前のつくものはスポーツです。人間同士があらかじめ決めたルールに沿って、勝ち負けを決める。武術には、ルールはない。(たとえば忍者が相手を襲うときには不意をつくわけで、こんにちはと挨拶をして戦うわけではありませんし、反則もありません。戦って生き残ったものが勝ち。)あえてルールを挙げるとすれば、人間の動物としての骨格、関節、筋肉、反射神経の在りようがルールであり、それに従うのがルール。その基本に逆らった行動はできませんし、動物としての動きを最大限に有効に引き出すことができる人が強い人になる。甲野氏は常に「負荷を分散させ、一ヶ所の筋肉に負担がかからないように。」とおっしゃっています。全身で受け止めるほうが、動物として自然ですし、そのほうが疲れません。昔は機械がありませんので、仕事は全て人力が頼りでした。例えば介護に携わるお仕事にしても、手首の動き1つで介護者の体の負担が格段に楽になるそうですよ。
3.本当の話は、信じてもらえない
人間は、経験上想像可能なことしか信用しない。これまでの経験からはとても考えられないようなの特異な出来事は、脳が拒絶反応を示し、考える事を中断してしまう。いくら目の前に事実が示されても、無視してしまう(つまり、見なかったもの、無かったものとして受け入れないと頭が混乱して明日から生きていけなくなる・・)。武術の動作を取り入れた新しい体の動きをいくら提唱しても、なかなか受け入れてもらえないそうです。
「今の日本人は、五感が鈍っていて、もう取り戻すことはできないでしょう。」と嘆いておられました。明治初期に日本文化に触れた西洋人は日本を絶賛してたくさんの書物に紀行文を寄せていますが、逆に日本人は、西洋文化を文明開化の名の下に取り込み感覚を鈍らせてしまったと・・。
昨日と今日、お店でケーキの試作品を作っています。未だ完成品にはなりませんが、料理は五感が大事。実感中です。
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