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2011年1月21日 (金)

コーヒーは淹れたてが美味しい?

昨日、お客様からコーヒーについてのご質問メールが届きました。
「コーヒーを注文したお客さんにストックを温め直して提供していました。
コーヒーは、炒りたて、挽き立て、入れ立てが美味しい秘訣と記憶していたので、
なぜドリップしないのか不思議に思いました。」

以下のように回答メールをお送りしました。
10時3時での実際のコーヒーの淹れ方です。ご参考までに。(一部修正しています)

コーヒーを淹れる経験アリのようなので、少し詳しくコメントを・・。
炒り立て=△・・炒り立て直後は豆の中のガスが抜けないと、抽出時の味が不安定。
焙煎後1週間以内。
挽きたて=○
淹れたて=一般的には○といわれていますが・・。
オーダーごとに、ネルまたはペーパーで入れたてを、その場で提供するのが普通は良いとされています。ですが、厳密には抽出後1時間から数時間後のほうが、味がまろやかになります。
カレーなどの煮込み料理は作りたてではなく、しばらく置いたほうが味が落ち着くでしょう。リーフティー紅茶も、3分後から飲めますが、皆さんの嫌う(とげとげしい)渋みが最大になるのは15から20分後で、その後は段々と丸い渋みに変わります。コーヒーも黒い液体の中に、カフェインのほか色々な成分があります。抽出後しばらく置くことで、それらの成分が融合して、味がまろやかになります。
最終的には、どのようなコーヒーをお客様が飲みたいのかで決まりますが・・。

また、お店の形態とコーヒーの提供の仕方、お値段も深く関係します。
コーヒー専門店は、最低2人の作業員が必要です。バイトがいた頃の開店して4年くらいは、オーダーごとにドリップしていました。ご存知かもしれませんが、コーヒーの抽出を始めると、途中の中断ができません。お金のやりとり、電話、接客などその他の作業が完全に止まります。コーヒー専門店に行くと、「コーヒー抽出中に話しかけないで」って言われませんか?安定した香りと味のコーヒーをお出ししようとするとそれくらい集中しないといけません。支払いをコーヒーチケットにする、顔見知りの人ばかり、少しの時間を待ってくれるようなお客様ばかりだといいんですが・・。コンビニやファーストフードなど、「お客様を待たせない接客」が主流の今日で、「待つこと」を苦痛に思う若い世代が増えています。
メールが届くと即座に席を立って「お勘定」ってレジに来られます。若い人は、行動がデジタルなんです。こちらの都合で待ってくれる人など期待できません。お店にご来店のお客様のうち、観光客や、出張中のサラリーマンなど初めてのお客様(いちげんさん)が全体の半数です。そのような理由があり、オーダー毎というのはちょっと難しいです。

実際のところ、コーヒー専門店であっても、1杯立てドリップコーヒーをお出しするのは、個別のストレートコーヒーのオーダーではないでしょうか。看板商品のブレンドコーヒーなどは、10から15杯程度をまとめて作り、温めなおしていると思います。
理由は、ブレンド豆の比率の安定、ドリップごとの安定した味の提供、安い価格の設定、オーダーの集中化。ご注文からコーヒーが実際に出るまでの時間の短縮など。(お店側での抽出作業時間の短縮。)喫茶店では、どのメニューでも1人と5人などの大人数、昨日今日明日と、同じ味が要求されます。

お店でやっているコーヒーの淹れ方を書いておきますので、もし機会があれば、淹れたて直後、1時間後、数時間後など、ご自分でお試しになってみてください。
コーヒー豆 ブラジルストレート50グラム
豆のひき方 淹れる直前に。あら挽きネルドリップのあらさ。
道具 カリタ102+ペーパーフィルター
抽出温度 80度
出来上がり 1リットル(6杯分、お店のコーヒーカップは少し大きいので・・)
酸化防止のため500mlのペットボトル2本に注ぎ、キャップの手前までコーヒーを満たし、キャップを閉めます。ペットボトルは固めのものを。「エビアン、いろはす」など柔らかのは危険です。
オーダーがあれば、1杯あたり160ccを手鍋に入れ、弱火で時間をかけてゆっくり温度を上げ、80度で火を止めます。温めておいたカップに注いでできあがり。
コーヒーカップの液面からのアロマ(匂い)については、確かに淹れたてのほうが強く感じます。アロマ重視であまり味のないアラビカ品種(モカ、キリマンジャロ、ブルマンなど)は、淹れたて直後がいいでしょう。しかしながら、スタバなどのシアトル系コーヒーが日本に上陸して以降、マンデリンなどのアロマよりも味、苦味を重視する品種に、嗜好がうつりつつあります。12年前から、クッキングスクールのコーヒーの淹れ方講座を担当いますが、この嗜好の変化は顕著です。
コーヒーを飲んだ時の味のまろやかさと、喉から鼻腔に抜ける香りについては、淹れたて直後よりも時間をおいたコーヒーのほうがいいのではと、私は感じますね。

人工的な香りをつけているフレーバーティーは別にして、一般的なスタンダード紅茶
の香りというのは、ティーカップの液面から出てくる匂いではなく、喉から鼻腔に抜ける香りを指します。
コーヒーだからといって、手抜きをしているつもりはありません。

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コメント

 あー、確かに誤解されがちかもしれませんね。私もコーヒーは必ずしも入れ立てがベストとは言えないと思います。

 たぶん、コーヒーの劣化の中で特に味にも体にも悪いのは酸化ではないかと思うのですが、その点からみても、コーヒー粉は急速に酸化しますが、豆と液はそうでもないですよね。

 私の場合は酸化したコーヒーを飲むと胃が痛くなるので、自分自身がちょうど良い測定器になっています。

投稿: Yosh | 2011年1月21日 (金) 15時22分

Yoshさん、いつもコメントありがとうございます。
淹れたて直後のコーヒーは、香りはいいんですが、なんとなく味気がなく、心持ち薄い感じで、飲み応えがなく物足りません。仕入れ先の珈琲堂のM氏は、「落ち着きがなく、ざわつく、バタバタと暴れる」などと表現されていました。
今回のBLOG記事は、内心ちょっと不安で、「やっぱ淹れたてに限るでしょ!」ってコメントがきたらどうしようかと・・。最終的には、個人の嗜好の範疇になるで、コメントの返しようがないなぁと思ってたり・・。
最近パッケージが変わった「ジョージア缶コーヒー」の表示に「酸化防止処理」のことが表示されていました。

投稿: 10時3時の店長より | 2011年1月21日 (金) 19時39分

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