私が紅茶の世界に入る決定的な出来事。それは、大阪ムジカティーさんの堀江氏の著書「紅茶の本(南船北馬舎刊)」に出会ったことでした。たぶん1990年頃。その本は、平易に大阪弁を交えながら紅茶のことが色々書かれてあり、200ページくらいを一晩で読み終わりました。それ以来、何かにつけて読み直すことの多い本です。
初版本は、1989年刊、友人にプレゼントしたので手元にありません。
改訂増補版は、1992年刊、10時3時の店内に常備してあります。
更にこの度、決定版の2006年刊というのを、図書館で発見しました。
この本の記述に、どうしても理解できない箇所があったのですね。
それは、「葉っぱの量と蒸らす時間」という項目の、
「そもそもカップ一杯分だけの紅茶をつくるなんてことは不可能なんですね。」
(増補改訂版73ページ)。
紅茶は、経験的に一度に多く作ったほうがおいしくでき、ご飯を炊くときに多めに炊いたほうがおいしいご飯ができるのと同じことと説明があります。ほんとうかなぁ・・・。
で、色々な紅茶の本を読んだ結果、その箇所、つまり紅茶の最少量の記述が、どの本も経験的なことしか書かれておらず、すっきりした理論的、合理的な説明が一つもないことを発見したのです。
例えば、前回のBLOGに登場した荒木安正氏の「紅茶の世界」では、
「あらゆる飲食物に共通するのは、「最低単位の1杯分をおいしく造ることほどムズカシイ事はない。」という点である。」(初版246ページ)
また、東京の紅茶店「ティーハウスタカノ」の高野健次氏の著書「紅茶 おいしいたて方」(1997年新星出版社刊)では、
「ポットでいれる場合は、この量では少なすぎて、紅茶の旨みを十分引き出すことができません。このような理由から、ティーカップ2杯分の紅茶をいれるために、茶葉の量は・・・」(初版20ページ)
確かに、ネルドリップの一杯立てコーヒーは職人技ですし、ご飯も1合炊くのは面倒。(最近は電子レンジ用1合炊きグッズがありますが)。明らかな現実として、ティーポットを使っての1杯分の紅茶は、色が赤いだけでおいしくありません。
しかし、紅茶の1杯だけのご注文は、実際のところ、10時3時のお客様の中でもかなり多いのです。お時間がない、アフターランチに2杯は多い、濃くなった紅茶は渋くてダメなど。さまざまな理由から、ちょっとだけの紅茶がほしい時もあるのですね。
本格的な紅茶は、正式にティーポットで2杯分を入れて、かしこまって(?)いただく必要があると思いますが、それは非日常。紅茶専門店の方が、丁寧に紅茶を教えるのは大変いいことなのですが、丁寧においしい淹れ方を指導するほど、反対に、一般の人はその丁寧な紅茶を非日常の出来事として面倒なことと受け取り、各自の習慣の中に取り込むことができないのではないでしょうか。
日本国内のほとんどの生活シーン(つまり日常)では、1杯だけの需要が圧倒的。
10時3時の1杯立て紅茶の抽出器具「ティーハット80℃」は、このような経緯から生まれました。詳しくは、10時3時HPまで・・・
http://homepage3.nifty.com/tearoom1003/frame.htm
特許を取得し、製品が生まれて約10年。
上記の堀江氏の、「不可能なんですね。」の部分は、「紅茶の本」の決定版では、「不自然なんですね。」に訂正されていました。訂正箇所の発見は少し嬉しかったです。
普段から当たり前のようにティーポットで紅茶を飲むヘビーユーザーには、未だに認められていないような感じはしますが、少なくとも不可能ではなくなりました。
決定版「紅茶の本」には、色々な箇所で加筆、訂正がありますので、改めて一読されるのもおすすめです。
一杯だけの紅茶をおいしく作る方法は、ほかにもあります。次回BLOGにて。
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