« マレーシア産サバティー | トップページ | 栗ときな粉のパウンドケーキ »

2008年9月12日 (金)

栃の実のあく抜き

ご注意・・・今回の栃の実のあく抜きの内容は、失敗例を含んでいます。参考例として最後までお読みいただいて、実際にあく抜きをされる場合には、実の大きさや処理に許される許容時間など、それぞれにお考えいただきますよう、お願い申し上げます。

8月31日(日)の朝、近所のスーパーFGからの帰り道、平和大通りと中央通りの交差点の植え込みで、風に乗ってばらばらと落ちてくる木の実と遭遇。栗によく似ていますが、ちょっと違っていました。栃の実でした。今年は天候がよく、栗などの木の実も豊作のようです。
Totinomi栃の実は、そのままでは食べられず、あく抜きも大変なことは承知していましたが、最近の食料品の値上がりラッシュを見るにつけ、ひょっとしたら将来、栃の実にもお世話になるかもと思いまして、お遊び半分、実体験半分で、あく抜きをやってみました。縄文時代の人たちは、あく抜きしてちゃんと食べてたんですよね。

1日目・・・外皮を取り、天日で丸1日乾燥させます。25個くらい、重さにして250グラムです。
2日目・・・水につけ、丸1日置いておきます。鬼皮がやわらかくなります。水に浮くものは捨てましょう。
Totinomi13日目・・・鍋に水を張って栃の実を入れ、1度沸騰させます。これで中に虫がいても死にます。お湯を捨て、実を自然冷却させ、ナイフで鬼皮を取り去ります。鬼皮は固いので気をつけて。軍手もしましょう。鬼皮を取りますと、正味150グラムになりました。
取り出した黄色い実は、ホクホクではなく、少しねっとりしている感じ。小さなかけらを一口かじるととても渋く、口の中が大変な事態に。1時間くらい胸焼けがとまりません。
Totinomi2Totinomi3  取り出した実を5ミリ角くらいに刻んで、ネット(みかんなどが入っていた赤い網)に入れ、水の中に浸します。水に入れた途端、水の色が黄色く変色していきます。水の中で実を揉むと、大量の泡(あく??)が・・・。ボールの中の水を1時間毎に入れ替えます。これは石鹸か?と思うくらいに次々と泡が出つづけます。夜は水に浸したまま、帰宅しました。
Totinomi4 4日目~・・・相変わらず、1時間毎の水の入れ替え作業。栃の実せんべいを作っているような場所だったら、ネットを清流の中に入れたまま数週間放置するそうです。街中ではちょっと難しいですね。
石鹸ができる前は、栃の実は石鹸の代わりに用いられていたようです。なんだか手がつるつるになってきました。
そして、思いがけない朗報が。泡だった水のなかにティーポットやカップをつけておくと、茶渋がきれいに落ちるということが判明しました。漂白剤は、食器に漂白剤の匂いがつくのであまり好きではありませんでした。栃の実を使うとちょうどいい感じかもしれません。誰もやらないことをやってみると、色々発見があって面白いです。もしかして特許が取れたりしてね。(・・・既知の事実でした。)

Totinomi5 6日目・・・少し変化が現れました。あまり泡が出なくなり、水の色が薄い黄色ではなく、白濁してきました。ボールの底のほうに白っぽい沈殿物が。たぶん澱粉でしょう。砕いた実はやや白っぽくなり、小さなものは指で押すとつぶれるくらい、大きなものは固いままです。あくの残っている実が混ざるといけないので、もうしばらく水につけることにしました。水の中で砕いた実を揉むと、小さな実のかけらが分離して赤いネットから逃げていきます。澱粉質も水に溶け出すと、出来上がりが素っ気ない味になるのではと、ちょっと心配。
Totinomi6 コーヒー用のペーパーフィルターで試しに濾してみるとこんな感じ。おいしそうなのでたべてみました。最初は甘くていい感じだったので、ぱくりといったのですが・・・喉もとを過ぎるころから・・・じんわりと渋みがきて・・・だめでしたぁ~。)
結局、大きな実のままで水につけると、実の中心まで水が浸透するのに時間がかかるので、色々なHPに書かれているように2週間から1ヶ月近く清流に浸しておくということになるのでしょう。(水と触れることで、水溶性タンニンが実から出て行きます。)また、今回のように、実を小さく砕いて水につけると、実の中に早く水が浸透するので、1週間程度でいいのですが、実が水の中で小さく分解して量が減り、また、栃の実の澱粉質やおいしさが、水に出て行きやすいということですね。Totinomi7
  7日目(9月6日)・・・栃の実を水につけて丸5日。昨日と同じように、水の中で実を揉んでいると、なんと、ほとんどの実が粉々になって分解し、あっという間にネットから流出。全体の1割くらいが固いままでネットの中に残り、後は微粒子になって水の中を漂っています。固形物がほとんどなくなるという予期せぬ出来事にア然!とし、どうしたものかとしばし模索。

Totinomi8とりあえず、網目の違う茶漉し2種類を使って、微粒子を回収。ネットの固形物は、水の中でスプーンの背でつぶして溶かし、それでもなお固い実は、エグ味が取れていないので、今回は捨てました。(何週間も待てないので。)
ここで、重曹を使ってみましょう。本来なら、広葉樹の木の灰を使うそうですが、手元にないので代わりに重曹を使います。重曹を使うと、あく抜きと同時に、繊維質がやわらかくなるそうです。水と重曹の割合がわからないので、蕨のあく抜きのHPを参考に。熱湯1リットルに対して重曹を小さじ1(3グラム)の割合にします。
Totinomi9 マグカップに熱湯を注ぎ、重曹を入れて、その上から、微粒子が入った状態の茶漉しをそのままカップの中に沈めました。このほうが、この先繰り返し洗ったりするの簡単だと思うので。このまま1晩放置して様子を見ます。
8日目・・・丸1日経って中をのぞいてみますと、粗いほうの網目の茶漉しに入っていた実が、なぜか半減しています。重曹の効果で実がやらかくなって分解し、カップの底に微粒子が沈殿していました。沈殿した微粒子を、もう1つの細かい網目のカップへ移して、カップの中の重曹の水を捨て、軽くすすぎ、再び熱湯+重曹の液に実を茶漉しごと沈めました。
9。10日目・・・昨日と同じことを繰り返しました。
11日目(9月10日)・・・粗いほうの網目の中の実は、ほとんどなくなってしまいました。細かい網目の側も、少し微粒子が減っています。このままだと何もなくなってしまうので、軽くすすいで、食べれるかどうか少量を試食。渋み、エグみはほとんど抜けていますが、味も何もないただのペースト状の微粒子って感じです。ここで渋抜き作業はおしまいにしました。出来上がり量は、50グラム弱。これは、結局、小さく刻んであく抜きをしてはいけないってことですね。5ミリ角の実がたくさん残ることを想定していたので・・・どう使おうかなぁ。
Totinomi012日目・・・出来上がりの状態がペースト状のため、蒸らして使うということができないので、お店にあったお団子の粉と半々の割合で混ぜて、練り込んで使うことにしました。
長い長い道のりでしたが、ようやく出来上がりました。栃の実入りのお団子!(たったの8個!!)。
写真左の小さなのが栃の実入りで、写真右の大きくて白いほうはお団子の粉100%。栃の実入りのお味のほうは、渋みもなく、素朴で温かみのある感じでした。感無量です。
Totimoti もうすぐお月見なので、きな粉をまぶしてお月見団子にしていただきました。

おまけ・・・あく抜き後、下水道のごみ処理装置グリストラップの掃除をしたところ、下水管の配管内の汚れ、水垢がきれいに取れていることがわかりました。栃の実のむき実を、何個か下水管の入り口に置いておくと、配管内がきれいに掃除できそうです。

2015年9月15日追記・・
民俗学者の宮本常一さんの著書に栃もちの作り方の記述がありました。最新BLOGにUPしました。ご参考までに。
http://tearoom1003.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-46ca.html

|

« マレーシア産サバティー | トップページ | 栗ときな粉のパウンドケーキ »

グルメ・クッキング」カテゴリの記事

コメント

栃の実が小説に出てきたので、気になって調べてみて、ここのブログにたどり着きました。大変さと新たな発見に驚きです。栃の実を見つけたら、みかんネットに入れて排水溝に垂らすのはやってみたいですね。笑。とても興味深く面白かったです。

投稿: ミラ | 2012年7月21日 (土) 15時41分

ミラさん、コメントありがとうございます。
ほかにも色々な遊び方があるかと思いますので、楽しんでいただけたらと思います。

投稿: 10時3時の店長 | 2012年7月21日 (土) 19時58分

初めまして緑のフードと申します!
自分も前から栃餅など興味が有り、作ってみたいと思ってましたが、何となくアク抜きは大変と聞いてまして調べたら
ココに辿り付きました!
只今トチの実が手元に有ります!
思った以上にアク抜き大変ですね!
十分参考にして頂きます!
では失礼致しますm(_ _)m

投稿: 緑のフード | 2012年9月 9日 (日) 07時08分

緑のフード様、コメントありがとうございます。
ほかにも色々な方法があるかとおもいます。お試しになってみられて下さいね。

投稿: 10時3時の店長 | 2012年9月 9日 (日) 17時13分

はじめまして!
子どもが幼稚園の木から拾って持ち帰ってくる栃の実をきっかけに、トチの実レシピを調べていたらたどり着きました!
栃の実、ものすごい労力と時間のいる食材なんですね…特にアク抜き…笑

近所に比較的キレイな川があるんですが、ネットに皮をむいた実を入れて数週間放置すればアク抜き完了するかもですかね??(腐っちゃうかな?)
絵本で読んで憧れた、あの味を実際に食べて見たい!とはおもうんですが…記事を読ませて頂き軽い気持ちでは出来ないなと思いました(^^;

投稿: あや | 2012年9月18日 (火) 22時37分

あやさん、コメントありがとうございます。
大昔は、飢饉に備えて、子供が生まれるとトチの木を植えたそうです。今と違って食べ物が収穫できなければ命が危うい時代、川の水に浸けるだけのあく抜き作業で食べれるのであれば、トチの実も貴重な食料だったのではないかと思います。色々とお試しくださいね。

投稿: 10時3時の店長より | 2012年9月19日 (水) 18時54分

初めまして。
栃のみのあく抜きの仕方を検索してたどりつきました。
私も主人と喫茶店を営んでるものです。
お客さんから、あく抜きの仕方を聞かれ
こちらの記事を参考にさせていただきました。
大変助かりました。
ありがとうございます。
私も機会があれば、やってみたいと思います。

投稿: はにはに | 2012年9月26日 (水) 10時06分

はにはにさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
ホームページ拝見しました。
お役に立ててうれしく思います。
今年の金沢は、とても暑かったそうですね。
会社員時代、20年も前になりますが、
末浄水場の仕事で、夏と冬、各3ヶ月ほど過ごしたことがあります。とってもいいところ。
白山にも登ったことがありますよ。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: 10時3時の店長 | 2012年9月26日 (水) 14時13分

10時3時の店長さんありがとうございます。栃の実を200個ほど拾ってあく抜き挑戦中です。新鮮な実で生で鬼皮をむいて550グラム。洗濯ネットに入れてバケツにつけています。あと半分は天日で5日くらい干して、11月くらいにあく抜きやってみようと思います。
天日で1日干さずに、鍋で沸騰させずに、木から落ちて3日以内の新鮮な実を鬼皮をむいて水に漬けました。水もあまり黄色くならないし、泡も出ません。やっぱり、店長さんのおっしゃっているとおりじゃないとだめかな?
まあ、ものは試し・・・良い結果のご報告ができるよう祈ってます・・・

投稿: かずみ | 2013年9月23日 (月) 16時53分

かずみさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
ものは試し・・、無理をしない範囲で色々と工夫されてみてくださいね。
今日の朝のNHKラジオで、彼岸花の話がありました。「球根の株分けで増える植物。人の手で増やさない限り現在のように日本中のあちこちに散見できるはずがない。有毒ではありますが、食用として株分けしたとしか考えられません。」と。昔は食べる物がなかったのですね。栃の実も、何とかして食べようと先人は知恵を絞ったのでしょう。食に対するの執念の賜物、ご苦労があって今の私たちが存在できるのですね。
吉報をお待ちしています。

投稿: 10時3時の店長 | 2013年9月23日 (月) 20時21分

こんばんわ!昨日娘が引っ越ししたすぐ近くの公園の山側に山葡萄を取りに行ったら、栗のような実が沢山落ちていました。孫と拾って持ち帰りました。木のてっぺんにはまだ実がなっています。もう少し拾ってみようと思います。 直感でトチの実かなと思いPCで調べました。栃餅は大好きです。 広島県北あたりではおみやげにつきたての餅を売っています。
団地の植林の様です。孫と楽しみながらアク抜きをしてお餅が食べれたら最高です。もう少し集めて作業をしようと思います.。63歳のばぁばです。ありがとう!

投稿: 風のたみこ | 2013年9月24日 (火) 21時39分

風のたみこさま、コメントありがとうございます。お土産品等で市販されている「栃餅」と同等とはいかないと思いますが、ぜひお作りになってみられてください。(2013年9月のBLOGにUPしましたおすすめの本「栃と餅」によりますと、現在の商品化されている御餅と、縄文時代以来の伝統的に食されていました御餅は、かなり違うようです。食される理由、栃の含有量、食味、後口の香りの余韻など)

投稿: 10時3時の店長 | 2013年9月25日 (水) 14時34分

高校の授業で栃のみの勉強をしています。
参考にします。

投稿: る | 2014年9月24日 (水) 14時34分

「る」さん、コメントありがとうございます。
あまり良い実験例ではないとは思いますが、ご参考になればと思います。ひとつ上のコメントで書いている「栃と餅」の本は、とても参考になると思います。縄文時代から山間部でいかにして暮らしていくか、あくの強い栃をどのようにして食べれるレベルにまで加工していくのか、古代人の知恵が伺えます。(わざわざ好んで食べるような美味しいものでは決してありません。)
2013年9月に書いた「栃と餅」のBLOG
http://tearoom1003.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-bb47.html

投稿: 10時3時の店長 | 2014年9月24日 (水) 17時28分

先日近くの公園で大量の「栗」を拾ってきたので、ゆでて食べてみたらものすごく苦く、少し齧っただけで全部廃棄処分。栃の実と知ったのはこの時です。それであく抜き方法を調べていて、こちらにたどり着きました。アク抜き作業ってこんなに大変なんですね。ビックリです。やはりさっとゆでてさっと食べられる栗のほうが好きです。とても興味深い記事をありがとうございました。 

投稿: エミリア | 2014年9月28日 (日) 22時27分

エミリアさん、コメントありがとうございます。栃の実が食べれたら、食糧難も一気に解決しそうです。それでも時折、何かの虫の幼虫が実の中にいてモグモグと、たくましく生きてますよ。
今年は日本ではイタリア栗を使ったスイーツが流行しています。現地の栗の収穫は激減していると聞きますが、実際のところはどうなのでしょうか?よろしければお知らせいただけたらと思います。

投稿: 10時3時の店長 | 2014年9月29日 (月) 12時42分

こんにちは ウォーキングの途中でとちの実を拾いました。以前とち餅に挑戦して失敗したのですが、このブログをみてもう一度挑戦してみることにしました。

私も喫茶店しています。
きゅうに寒くなってきました。お体大切に頑張ってください。

投稿: フランネル | 2015年8月29日 (土) 13時46分

フランネル様、コメントありがとうございます。
あまり期待せずに、のんびりとおつくりを。
貴店ブログ拝見しました。素敵なお店ですね。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

投稿: 10時3時の店長 | 2015年8月29日 (土) 16時04分

ありがとうございました。
おかげさまで、美味しくできました。
捨てられる運命だった餅つき機はしばらく
活躍できそうです。感謝<(_ _)>

投稿: フランネル | 2015年9月12日 (土) 15時26分

フランネル様、BLOG拝見しました。お疲れさまでした。民俗学者の宮本常一さんの著書に栃もちの作り方の記述がありました。最新BLOGにUPしました。ご参考までに。
http://tearoom1003.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-46ca.html

投稿: 10時3時の店長 | 2015年9月15日 (火) 16時55分

散歩の途中で一個を拾いました。まわりにも、沢山落ちていて、皮のついたままのもあり、リスの頬袋のように、ポケットいっぱいに入れてかえりました。インデアンの生活の本を読んだ中にとちの実を拾った事が書かれていたように思います。とちの実を初めて見ました。とても可愛らしいです。
調べていましたら、とても時間を要する事を知りました。ゆっくりあく抜きをしてみます。とち餅を作って食べたいと思います。

投稿: アスパラガス | 2020年9月17日 (木) 09時32分

アスパラガス様、コメントありがとうございます。あくぬきは、時間がかかりますので気長にされてみてください。昔の人達は、栃の実を網に入れてきれいな沢に吊るしていたそうです、1ヶ月くらい。秋は農作物の収穫時期なので、食料にはあまり困りませんが、冬の間、翌年の春の山菜までの時期に食料に困窮しないように準備をしていたようです。

投稿: 10時3時の店長 | 2020年9月17日 (木) 11時25分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 栃の実のあく抜き:

« マレーシア産サバティー | トップページ | 栗ときな粉のパウンドケーキ »